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短編集  Dear my precious…

第25章 初めてはいつも貴方で*赤葦京治[ハイキュー]


体育館に入って、感じたこと。
それは空気の違いだった。

やっぱり男の人がいると違うのかななんてぼんやり考えてしまう。
女子校にはこんな雰囲気は無いもの。
毎日、ここで練習してるんだ…

「奏。」
「赤葦くん。」

お互いを見つけ、同時に名前を呼ぶ。
なんだかおかしくて吹き出してしまった。

「ということで、木兎さん。俺はもう帰ります。」

冷ややかな目を木兎さんに向ける。
でも木兎さんも怯まず、丸い目を赤葦くんに向けた。

「ほんとに彼女なのかよ?!」

疑いの目を向けられる。
鋭い目に貫かれる。

他の人たちは、「木兎、何言ってんだよ…」とか「野暮だろ。」とかこっちの味方のようだ。

でも木兎さんは逃がしたくないらしい。
…愛されてるね、赤葦くん。

「赤葦の!こんな奴のどこらへんが好きなの?!」

すっかりテンションの上がった木兎さんの迫力に後ずさる。

一方赤葦くんは「こんな奴呼ばわりですか…」とため息をつく。

「でもそれは俺も聞きたいです。」

くるりとこちらに目を向ける。え、助け舟を出してくれるんじゃないの?!

他の人の視線も向けられ、言わなきゃいけない雰囲気だ。

「え…え、と…昔っからクールで大人っぽくて、でも時々、笑顔とかがとっても可愛くて…そのギャップにやられたというか…その……」

恥ずかしすぎてどんどん声が小さくなる。
自分の手で顔を覆った。
ダメだ、私今絶対真っ赤だもん。



「ほら、もういいですよね?」

すっかり静まった体育館に赤葦くんの声が響く。

「赤葦もなんかやれよ!」

木兎さんもよっぽど逃がしたくないのか、食い下がる。

「……わかりました。」

「え、」

小さく頷いたと思うと、私の顎に手が掛かる。

そしてそのまま……


「では着替えてきます。……奏はここで待ってて。」

赤葦くんが体育館から出て行く。

体育館にいた全員、もちろん木兎さんも呆気にとられる。


でも一番驚いたのは私だ。

え、と、今…キス…された……?

温もりを確認するように、唇に触れる。
いきなりだったのに優しい柔らかさを思い出して、顔が熱くなる。



気がついたときには、もう梟谷から出ていた頃だった。
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