• テキストサイズ

千銃士【Noble Master Project】R18

第2章 目覚め



「沙優くん、これは君と同じ日本生まれの銃だ」


目の前に用意されたのは、艶めいた木と鉄でできた銃身。


「火縄銃…ですね」
「知っているのか?」
「えぇ…詳しくはありませんが……日本にもこうしたものを手入れしたり加工する技術集団がいて…私もそこにいました」
「そうだったのか…!」


恭遠は目を輝かせて頷いていた。




数分前、彼から信じられないような話を聞いた。


この世界には、この古びた銃から特別な力を持った人間を呼び覚ますことができる者がいるのだという。

呼び覚まされた存在は『貴銃士』と呼ばれ、特別な力に目覚めると『絶対高貴』という人外の力を発揮するのだという。

そして彼らを呼び覚ませるのは、身体にバラの痣を持った『マスター』と呼ばれる存在だけなのだ。


マスターだけが貴銃士を呼び覚まし、そして傷ついた貴銃士を癒せるのだという。





(つまり恭遠さんは、私がその『マスター』ではないか、と思っているんだ)

沙優は目の前に収められている火縄銃を見つめる。


「………触れても、いいですか…?」
「もちろんだ。好きに障ってくれていい」
「………」



………沙優は一歩一歩近づく。
近づくたびに……これは、予め「決まっていたこと」だったのだろうと、どこかで感じる。

それを確信させてくれるかのように…胸に刻まれた痣が、どくんどくんと熱を帯び始めた。

(…っ……こんなの、初めて……)

左手で痣を押さえながら、右手をそっと銃身へと伸ばした。



「……イエヤス…」



「っ?!……なぜ、それを?!」

指先が触れる直前、その名前が頭の中に流れ込んできた。
思わず口にすると、恭遠は愕然とした様子で後ずさった。

そして、指先が銃身に触れ……掴んだ瞬間。



辺りに光が溢れ出した。

「わっ………!!」


何も見えないほどの白い閃光が溢れ出す。
それでも、手を離さぬよう右手に力を込め持ち上げる。


すると、胸元の痣が赤く光り出し、焼けるような痛みが全身を覆った。

(っ……!!)


『…マスター、なのか』

声がする。

(お願い、力を貸して!!)
/ 63ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp