千銃士【Noble Master Project】R18
第9章 ラップ(R18)
「すみません……誰もいない場所がここくらいしか…なくて」
沙優は再びオオタカを住まわせている倉庫の小部屋に戻ってきた。
ラップの話によると、陛下には無事Noble Kissが終わったと思わせるため、薬で眠ってもらいマスターの部屋へ運んであるのだという。
ラップの部屋は他の貴銃士同様、相部屋の為、二人きりにはなれない。
「確かに少々狭くはありますが、他にこれほどのスペースが確保でき、人気のない場所はありません。森の奥なら話は別ですが……さすがにそれでは」
「そ、そうですね……」
オオタカは鳥かごの中ですっかり眠っている。イエヤスが言っていたが、タカは昼行性で、夜は人間と同じように眠るのだそうだ。
ここには運よく、使わなくなったソファがある。オオタカをここで飼うことになってから掃除をしておいて良かった、と沙優は心の中で思った。
「ここで、いいですか?」
「えぇ、ベッドには劣りますが…地べたよりはマシでしょう」
ラップは沙優と共にソファへ座った。
「……4挺も貴銃士を召喚されると、かなりお疲れなのではありませんか?」
「そう、ですね……今すぐと言われたらあと2挺が限界かと思います」
「…ふっ……そんな無体なことは言いませんよ」
ラップは珍しく柔らかい笑みを浮かべる。
その表情が珍しくて思わず見とれていると、「どうかしましたか?」と真顔で尋ねてくる。
「あ、その…ラップさんが笑ってるの、珍しいな…って」
「っ……失礼致しました」
「いえそんな!……むしろ、嬉しいです」
「えっ…?」
少し頬を染めた沙優がはにかむ。
「ラップさんは…いつも真面目で、ナポレオンさんのために一生懸命働いてるし、ニコラとノエルを召喚した後は2人のお世話もされているし……だから、少し心配してました」
「私のことを、ですか?」
「はい。その……いろいろ気苦労が多くて、疲れないかな、と」
「………」
「だから、笑ってるラップさんを見ると、少しほっとします」
その言葉に、ラップはしばし言葉を失い、そして静かに俯いた。
「困りましたね」