千銃士【Noble Master Project】R18
第3章 イエヤス(R18)
その日、少し仮眠を取った後に別の支部から分けられたブラウン・ベス、シャルルヴィル、スプリングフィールド、ケンタッキーの4挺を連続で召喚し、沙優はさすがに疲労困憊の状態で自室へ戻った。
前マスターに宛がわれていたという部屋は、簡素で狭いが一人部屋になっていた。
(……ん…さすがにちょっと…痛い……かも)
じんじんとしびれるような熱を持った胸元をそっと指でさする。
断崖絶壁に渡された一本の綱を渡り続けるような精神的疲労に、フルマラソンをした後のような肉体的疲労…。
睡眠だけで回復できるとは思えないが、今はただ身体を横たえることくらいしかできない。
(明日は……奇銃を2挺……召喚する…って……)
眠りたいのに、胸の痣がじんじんと疼いて眠れない。
(………いた…い…)
その時だった。
『マスター、起きているか』
扉の向こうから声がした。
あの声は……イエヤスだ。
「……ん…起きて……る…」
『入っても、構わないか』
(う……起きれるかな…)
「……はい…どうぞ」
カチャリ。ドアノブが回され、ゆっくりと扉が開く。
それに合わせて横たえていた身体を起こそうと試みる。
が、しかしうまく力が入らない。よろめく沙優を見たイエヤスは慌てて駆け寄りその身を支えた。
「無理をするな…横になっていろ」
「……はい…すみません」
「……大丈夫だ、マスター。あなたが今日、無理をしていたことは十分理解している」
そのまま枕に頭を静めると、ベッド脇に腰掛けたイエヤスが穏やかに笑みながら頭を撫でてくれた。
「いくら素質があるとはいえ、4挺連続で召喚するなど無茶だぞ」
「ごめんなさい……」
「謝らなくていい」
するとイエヤスは、少し視線を泳がせ言い淀みながら口を開いた。
「実は……恭遠から、マスターの回復ができる方法というものを教えられた」
「……私の…回復……?」
イエヤスは頷いて続けた。
「これは……絶対高貴に目覚めた一部の貴銃士にしか成しえない方法なのだという。ただ……その方法が…少なからずマスターを傷つけてしまう方法なのだ」
「傷つける……?」