第16章 恋の歌②(輪虎side)
空の青と葉の緑…
(幸運の象徴か…それなら僕は葵という幸運を手に入れたな……)
すると葵の笑い声が聞こえた。
「ふふ……そうしてるとホントに女の子みたい。」
その屈託ない笑顔と女の子みたいと言われたことに少し意地悪したくなってしまった。
「もぅ…僕のどこが女の子なの。この前、男だってよく分かったでしょ?」
ニッコリ微笑むと意味が分かった葵は真っ赤になって俯いた。
「またそういうことを……」
「はは、ごめん。やっぱりこれは君が付けて…」
今度は葵の頭にそっと花冠を載せた。
「可愛いよ。」
そのまま後ろに回るとぎゅっと抱き締め葵の肩に顔を乗せた。
見える景色が今日はいつもより綺麗な気がした…
「しばらくこうしてて…」
「うん…」
腰に回していた手に手が重なった。
やっぱり僕より小さいのにどこか力強い温かい手……
夏の始まりを告げる少し湿った風を感じながら同じ景色を見ているとふと思った。
「ねぇ、葵…」
「なに?」
「歌を歌ってくれない?葵の世界の歌。あの時とは違うのがいいな。」
僕がこんなお願いすることが珍しいのか驚いている。
「いいけど…このまま?」
「うん。」
すると少し考えた葵が何か思い付いたようだ。
「じゃあ、歌ったら私のお願いも聞いて。」
「ん?いいよ。なに?」
こんな風に何かをお願いされるのは初めてでワクワクした。