第15章 恋の歌①(夢主side)
翌朝、いつもより早い時間に輪虎が突然起こしに来た。
「葵!起きて!出かけるよ!」
寝ていた私は飛び起きたけど、何が何だか分からない。
「えっ?はっ?出かける?今日は練兵って言ってなかった?」
「今日は一日葵と過ごす。その為に昨日、無理矢理練兵までしてきたんだから。ほら、だから早く着替えて用意して。」
あまりに突然のことでワケが分からなかったけど急かされ用意を始めた。
朝食を食べると気付けば馬に乗せられ走り出していた。
「どこへ行くの?」
「今日はちょっと遠出。飛ばすからしっかり掴まっててね。」
そう言ってどんどん馬を走らせ始めた。
「は、速すぎ!」
「あはは!聞こえない~」
「もう!また!」
それは初めて輪虎に会った日と同じ会話…
(もう一度こんな風に馬に乗れるなんて思ってなかったな…)
笑顔の輪虎にぎゅっとしがみついた。
そのまま馬を飛ばして着いた所は王都を見下ろせる小高い丘。辺り一面にシロツメクサが咲いている。
馬から降りると辺りを見渡して感嘆の声を上げた。
「すごい綺麗…王都もあんなに遠い。」
「たまにこの近くで練兵するんだ。いい景色でしょ?」
「うん!」
満面の笑みでシロツメクサの中に座ると子どもの頃を思い出して花冠を作っていた。
「それ何?」
「花冠だよ。小さい頃、よく作って遊んでたんだ。」
「へ~…」
少し輪虎の顔が曇ったような気がした。
(もしかして妹さんのこと思い出してる?悪いことしたかな……)