第15章 恋の歌①(夢主side)
翌日からの輪虎はとても忙しそうにしていて、毎日朝から夜遅くまで廉頗将軍の屋敷に行ったり、帰ってからも部屋で大量の書簡と向き合っていた。
ゆっくり会えるのは食事の時くらい。
それでも毎日笑顔で見送って出迎えた。
ささやかだけどとても穏やかな時間…
でも10日程経った頃…
「んー?これじゃあいつらの思惑通りじゃないのか?」
朝食を食べながら輪虎が呟いた。よく聞こえなかったけど。
「えっ?何か言った?最近、すごく忙しそうだけど大丈夫?」
最近の忙しさに心配そうに聞いた。
「う~ん…それがさ~あんまり大丈夫じゃないんだよね~…」
少ししんどそうにに言われるとさすがに疲れが溜まっているんじゃないかと思って焦った。
「えっ!?本当?ちょっと失礼。」
すぐに輪虎の前に立つと額に手を当てて熱がないか確認していた。
「う~ん…熱はなさそうかな?やっぱり疲れてるんじゃない?」
そこまで言ったところで座ったままの輪虎が腰に手を回してきてぎゅっと抱きつかれ凄く戸惑った。
「あ、あの…?」
「だってあれから全然葵に触れてないからさ~そろそろ限界~」
私を見上げてニッコリ微笑まれまた赤くなっていた。
「元気じゃない!!」
「え~…葵から元気もらわないとたぶん倒れちゃう。」
「仕事の方が大事だよね!?」
「んー?僕は葵の方が大事だよ~」
さらに笑みが深くなって見つめられると、ヤバい!この笑顔は何か裏がある…そう直感した。
でもそれ以上のことはなく、輪虎は立ち上がって頬に軽くキスするとそのまま剣を持ち外に向かって歩き出した。
「行ってきます。今日はここでいいよ。続き食べてて。帰りは遅いから先に休んでてね。」
ちょっと呆気に取られてたけどそれでもいつも通り「行ってらっしゃい!」と笑顔で見送った。
その日、輪虎はいつも以上に帰りが遅く部屋の灯りも私が眠ってからも消えていなかった…