第12章 名前②(輪虎side)
心の中でため息を吐くと介子坊さんの声が響いた。
「輪虎!さっさと準備しろ!行くぞ!朝から女とイチャつくなー!!」
(やっぱり……昨日といい…絶対どっかから見てるよね?)
「はいはい。すぐ行くからやっかまないで。」
軽く振り返るとと思わずそんな事を言ってしまった。
「今日は介子坊さんの隊と合同訓練なんだ。夕方には戻るから。一人で屋敷に帰れる?」
「うん。帰れるけど…大丈夫?」
「それくらいの体力はあるから大丈夫。君こそ帰り道でまたケンカ売らないでね。」
「別にケンカ売ってたワケじゃ……」
(ホントお願いだから厄介事に巻き込まれないでね。)
ふふ……と笑うとそっと頬に口付けしていた。
「輪虎ーー!!」
もう一度、介子坊さんの怒鳴り声が聞こえさすがにヤバイと思って葵に手を振って駆けて行った。
その日の合同訓練……
「輪虎ーー!」
介子坊さんの怒鳴り声に振り返るとあの大鎌で本気で僕に斬りかかってきている。
反射的に双剣を抜いて受け止め後ろに下がった。
「わっ!ちょっと、介子坊さんそれ本物!!」
「やかましい!俺が性根叩き直してやる!!」
「意味分かんない!!」
応戦したけど介子坊さんのあの重量級に付き合うのはホントに骨が折れるから普段から避けてたのに、この日は一日中付き合わさせる羽目になった……
そんな僕らの様子を見ていた僕と介子坊さんの副官は冷や汗をかいていた。
「あの…輪虎様が何か失礼でも……」
「はは……いや、あれは介子坊様の一方的なやっかみかと……」
「あはは……」
二人が顔を合わせて苦笑いしていた頃、僕は危うく殺されかけていた……