第12章 名前②(輪虎side)
その日は結局、明け方まで殿に飲まされ続けた。
貫徹のぼんやりした頭で朝日を浴びていると葵の声がした。
「おはよう?輪虎様…?」
振り返ると葵は少し不思議そうにしている。
(はは…さすがに眠そうだよね。)
「んー…おはよ。あはは、貫徹で飲まされたよ~さすがに眠いね。三十路には堪えるわ。」
自虐的に笑ったけど葵の顔がみるみる驚いた表情になってる。
(ん?何か変なこと言った?)
次の瞬間、耳を塞ぎたくなるほど大きな声が響いた。
「えええっっっ!!??30代ーー!?」
(ああ…そういや年のことは話したことなかったね。でも、面白いくらい驚くな~。ホント飽きないや。)
「えー、結構傷つくな~。これでも童顔のこと気にしてるのにー。」
ちょっと拗ねたような態度で遊んでみた。
「あのっ!そんなつもりじゃ…ごめん!もっと若いと思ってて…その…若いのに将軍なんてすごいな…とか……」
面白いくらい焦りながら言い訳をしていて笑いが堪えられなかった。
「あはは。嘘、うそ。ホントは顔のことは気にしてないよ。結構役に立つんだ。この顔も。それともやっぱりこんな30代は嫌になった?」
「そんなことない!私が勝手に思い込んでいただけで気持ちは変わらないから!」
必死に首を横に振って訴えてきているその姿さえ可愛いと思ってしまった。
「ふふ…ありがとう。でも今さら嫌だ!って言われても離す気はないから。」
言いながらふわっと抱き締めると二人とも笑顔になっていた。
やっぱり好きだな…そう思っていると葵の顔が不安そうになっている。
「寝てないなら少し休んだら?」
(ああ、そういう事か。僕も寝たいんだけど…はぁ…)
「ん~…そうしたいのは山々なんだけどね~…」