第1章 出会い①(夢主side)
「よっと…」
そう言われると一瞬で肩に担がれ、その人は歩き始めた。
(ヤバい!どうにか逃げないと…でも下手に抵抗したらきっと斬られるよね……)
そう思うと強くは言えなかった。
「あ、あの!困ります!」
そう言うのが精一杯だった。
「大丈夫。僕は困ってない。」
鼻歌混じりにそう言ってその人は歩き続けていた。
その時建物から上官が出てきた。
「葵!まだ掃除終わらないのかい!?次の仕事があるんだから…」
こんな人攫いの場面見たらさすがに助けてくれる…そう思ったけど上官の声色が変わった。
「これは将軍。うちの下女が何か粗相を致しましたか?大変申し訳ありません。」
私の顔は担がれた背中側にあったから状況がよく分からないけど、とにかく助かったと一安心していた。
でも、この後絶対怒られる…そう思うと少し震えていた。
「葵の上官?下女を一人貰っていくけど問題ないよね?」
(は?何言ってるの?この人…それに顔は見えないけどかなりヤバい雰囲気が出てる…)
「いえ…しかし…」
上官は口ごもっている。
「何か問題があったら僕の屋敷に使いを送って。その感じじゃ僕のこと知ってるみたいだし。」
ひっと上官がの声がした。
(何?この人?そんなに偉い人なの?)
そしてまた鼻歌混じりに歩き出していた。
(あれ?さっき将軍て言ってた?将軍てかなり偉い人だよね?優しいと思ってたけど身分にモノを言わせてどうこうしようって思ってるだけじゃないの!?)
そう思うと怒りが沸いてきた。
でもやっぱり怖いからそっと話しかけた。
「あ、あの…」
「ん?なぁに?」
「将軍…なんですか?」
その人がちょっと驚くのが分かった。
「ああ、そういえば自己紹介してなかったね。
そうだよ~。僕は将軍、輪虎。廉頗四天王の一人なんて言われてるかな?」
クスクス笑いながらそう言ってた。