第1章 出会い①(夢主side)
歌っていると色々思い出した。
学校のこと、友達のこと、家族のこと、歌を教えてくれたおばあちゃんのこと…あまり思わないようにしてたのに何故かどんどん思い浮かんだ。
(この人に見られてるから?優しいけどどこか寂し気な……)
ゆっくり歌い終わるとパンパンと軽く手を叩いてその人は立ち上がった。
「やっぱり綺麗な歌声だね。それにいい歌だ。」
綺麗な歌声なんて初めて言われたから恥ずかしかったけど、はにかみながら頭を下げた。
「ありがとうございます…」
でもいい加減、仕事に戻らないとまた怒られることに気付いた。
「あの…そろそろ仕事に戻っていいですか?」
顔を上げそう言ったけどその人は何かを考えているようで返事がなかった。
「あの……」
「うん、やっぱり無理だね。」
言葉の意味は全く分からなかったがとにかく何か危険だと思って一歩後退りした。
でも私が一歩下がるとその人は一歩前に来て私に迫ってきてた。
そして腕を無遠慮に掴まれた。
「ごめんね。このまま君を拐っていく。僕こう見えて欲しいものは我慢しないタチなんだ。」
そうニッコリ笑顔で言われ頭がまっ白になった。
(はぁ!?この人何言ってるの?てか、何者?人攫い?優しい顔してるけど絶対危ない人だ!)
そう思わずにはいられなかったけど完全にパニックになっていて言葉が出なかった。