第1章 出会い①(夢主side)
やっぱり…偉い人が身分にモノを言わせて…そう思うと怖いという思いより怒りが勝った。
そしてキツイ口調で言った。
「あの!降ろして!」
「えっ?」
「降ろしてって言ってるの!!」
戸惑いながらもその人は下ろしてくれた。
「どういうつもり!?いきなり連れ去るなんて!将軍なら何でも許されるの!?私の国なら立派な犯罪だから!!」
睨み付けながらここまで言って気付いた。
優しそうでもこの人は将軍。トップクラスの要人…きっと斬られる……
でも返ってきたのは怒りではなかった。
「えっと……怒ってる?何で?」
そう不思議そうに聞いてきた。
ちょっと拍子抜けしたけど怒りは収まらない。
「何でって…普通、こんなことしたら怒るでしょ?」
そう言ったが相変わらす怒りはないようで優しい雰囲気で肘を組むと手を顎に当てながら話してくれた。
「う~ん…確かにそうだけど僕は君を帰したくなかった。それについて来てって言ったら君は素直に僕について来てくれた?」
少し困った顔でそう聞かれると今度は私が戸惑う番だった。
こんなに強引なのにどこか寂し気で優しくて…さっきまでの怒りが収まっていくのが分かった。
「それは…ついて行かない…と思う……」
「でしょ?なら問題ない。」
戸惑い俯きながら答えると今度は手を掴まれ歩き出した。
(どうしよう?この手を振りほどけばいいのに…)
でもそれが何故か出来ない……
そのまま繋いだ手をしっかり握られた。
自分より一回り大きくて温かくて強くて優しい手…
この世界に来て初めて温かい手に触れたと思った。
輪虎…そう言ったその人を見上げるとその先に見えた空はやっぱり綺麗な青空だった。