第11章 名前①(夢主side)
すると介子坊様の声が響いた。
「輪虎!さっさと準備しろ!行くぞ!朝から女とイチャつくなー!!」
「はいはい。すぐ行くからやっかまないで。」
介子坊様にそんな軽口を叩くと輪虎様が私に向き直した。
「今日は介子坊さんの隊と合同訓練なんだ。夕方には戻るから。一人で屋敷に帰れる?」
「うん。帰れるけど…大丈夫?」
「それくらいの体力はあるから大丈夫。君こそ帰り道でまたケンカ売らないでね。」
「別にケンカ売ってたワケじゃ……」
ふふ……と笑い声がすると頬にキスされた。
「輪虎ーー!!」
もう一度、介子坊様の怒鳴り声がすると手を振って輪虎様は駆けて行った。
その姿を微笑んで見送ると私も帰路に着いた。
夕方には帰ると言っていたのに輪虎様が帰って来たのはとっぷり日が暮れてから。
帰ってくると何故か真っ直ぐに私の部屋に来た。
今までそんなことなくて何かされるんじゃないかとかなり焦った。
「え…あの…お帰りなさい…」
「うん…ただいま…」
俯いたままの輪虎様はいつもの雰囲気じゃなくて怖い…
「遅かった…ね……」
「介子坊さんにみっちりしごかれた…男の嫉妬って怖いね……」
フラフラと私に近付いてくると抱きつかれそのままベッドに押し倒された。
「きゃっ……」
思わず悲鳴を上げたけど、そのまま動かなくなった。
「え……」
すると静かな寝息が聞こえてきて深い眠りに入っているのが分かった。
(えっ?寝てる?相当、疲れていたんだろうけど……ビックリした~てか、重い……)
何とか脱け出すと布団を掛けてあげた。
顔を見ると少し泥が付いていてそれをそっと拭うとじっと寝顔を見つめた。