第10章 口付け②(輪虎side)
葵は今度は果実酒をたくさん飲んでいてハラハラしていたけど、前回よりは飲む量は抑えているようだ。
しばらくすると葵が席を外すのが見えて僕も後を追った。
外に出ると風は少し暖かくなっていて季節が夏になろうとしているのが分かった。
少し雲のかかった空は月が霞んでいる。
見ると葵はまた東屋に座っている。
「またここにいる。」
声をかけると葵は驚いたように振り返った。
「大丈夫?酔ってない?」
「うん、大丈夫だよ。」
ニッコリ笑うと立ち上がって来たが、どうやら酔っているらしくふらついて倒れそうになっている。
「おっと…ふらついてるじゃない。」
ふわっと葵の香りがしてそのまま抱き寄せた。
「ごめん…あの……」
葵が離れようとしたのが分かったけどぎゅっと抱き締めた。
「輪虎様…?」
「そんな無防備な姿、みんなに見せないで。」
そのままそっと口付けすると何故か葵は驚いているらしく目を見開いている。
「そんなに驚くこと?」
「いや…こういう不意討ちは……」
「ふふ…聞こえない…」
「だから、それは聞こえてるから…」
そんな言葉は遮ってもう一度口付けした。
今度は深く…
(甘くて柔らかい……もう止められそうにないや……)
葵が僕の口付けに応えようとしているのが分かる。少し辿々しくて…一生懸命で……
そんな葵の唇を…口内を…優しく責めた。
そっと唇を離すと潤んだ目で見つめられた。