第10章 口付け②(輪虎side)
殿の屋敷に着き事情を説明すると案の定、大王の遣いがやって来て僕を連れて行って詰問すると言ってきた。
対応は殿と姜燕さん、介子坊さんに任せて僕と葵は隣の部屋でその会話に耳を澄ませた。
「廉頗様、輪虎将軍をお願いします。お話を伺いたいだけです。こちらに来ているのは知っています。」
「おお、確かに来ておる。」
「では……」
すると姜燕さんの声がした。
「申し訳ありません。輪虎は持病の癪で寝込んでおりまして。」
「は?そんな話聞いたことありませんが?」
(持病の癪って……)
思わず声を出して笑いそうなのを必死に堪えた。
「そうじゃった。脚気で足が結核気味とも言っておったのぅ。」
「はぁ?」
(殿……それは………ふふふっ……)
面白過ぎてお腹を抱え必死に声を押し殺して笑った。
「なんじゃあ?此度の事はそちらに非があると聞いたぞ。」
「しかし……」
「何ならワシらとやり合うか?」
「いえ……」
殿の一喝に使者はすごすごと帰って行った。
それを確認すると笑顔で殿の前にいた。
「殿、ありがとうございました。でも、みんなして僕が癪とか脚気とか酷いな~。」
「ヌハハハ!お蔭で帰ったであろう!のぅ、輪虎…分かっておるな?」
「はは……勿論です。」
ニヤリとする殿に何を言いたいのかはすぐに分かりまた苦笑いしか出来なかった。
そして案の定、酒宴が始まった…