第10章 口付け②(輪虎side)
(その姿が男を煽るって知ってる…?)
「そんな目で見つめられたら止まらなくなるよ?」
抑え難い衝動を必死に押し込んで葵を見つめた。
葵の顔が背けられると無防備になった首筋にゾクッとしてそのまま唇を這わせ赤い跡を付けた。
「んっ……」
その声は頭の芯を痺れさせる……
指でそれをなぞりながら顎を捉えると顔を正面に向かせまた目が合った…
(きっと今、君に見せたことない顔をしてるよね……)
思いながら妖艶な笑みを滲ませる。
「ふふっ、綺麗に跡がついたよ。」
葵の顔はどんどん赤くなり戸惑っているようだ。
「輪虎様…」
消え入りそうな声が聞こえるとまた嗜虐性が刺激される。
「なぁに?それはもっと…ていう意味かな?」
「…意地悪……」
「知ってる。僕、結構嗜虐的なんだよ。」
ニヤリと笑みをさらに深くするとこのまま部屋に連れて行こう…もう止められない…そう思った瞬間、介子坊さんの大きな声が響いた。
「輪虎ー!殿がお呼びだ。どこに行った?」
(介子坊さん……何で今なんだよ!!)
はぁぁ……と深い深いため息を吐くと諦めて葵を見た。
「ごめん、今日はここまで。葵は酔って寝たことにしておくからこの前の部屋で休むんだよ。おやすみ。」
そっと額に口付けするとこんな葵は見せられないとさっさと介子坊さんの所へ向かった。
「はいはーい。すぐ戻るよー。」
いつもの声を出したけど体の熱はしばらく冷めなかった。