第10章 口付け②(輪虎side)
「…なるほど。」
そう一言呟くと剣を仕舞い掴んでいた手を離した。
「そういうことだからもう止めなよ。分かった?」
さっきの葵の言葉がこの兵にどこまで届いたか分からないがこれ以上は問答無用だ。
もう一度、危険な笑顔を兵達に向けると悔しそうに舌打ちをしてどこかへ行ってしまった。
(ああ…アイツらには伝わってないか……)
「あの…ありがとう……」
頭を下げる葵の声にハッと気付いたが、無謀な行動に深いため息が出た。
「はぁ…君の言い分は分かるよ。本来、身分とは国やその民を守るためのものだ。だけど丸腰でケンカを売るのはもう止めてね。」
「え……」
驚く葵に困った笑顔しか向けられない。
(君の中の将軍像は相変わらず酷いな~でも、アイツら曲がりなりにも大王の私兵だ。絶対また何か揉めるよな~……)
「僕だって伊達に将軍やってるワケじゃないよ。あぁ……また殿の所に行かなきゃ…」
もう一度、ため息を吐くと頭をポンポンとして葵を見た。
「ケガはない?」
「あ…うん……」
葵が助けた女の人がお礼を言ってきて軽く会話を交わすと手を繋ぎ歩き出した。
(まぁ、今回は向こうに非があるから大丈夫か…)
そんな事を考えながら殿の屋敷に向かって歩いていると葵がじっと僕を見ている。
「ん?」と首を傾げると顔を逸らされ不思議に思いながらもまた前を見て歩き出した。