第10章 口付け②(輪虎side)
(どうして君がそこで絡まれてるの……)
ガックリ肩を落とすと助けに入った。
葵は一人の兵に強く腕を掴まれ顔を歪めている。
「離して……」
「あの女の代わりになるんだろ?来いよ。」
「やだ……」
(全く…大王の私兵じゃなかったら即斬ってるのに……)
「何してるの?」
「え…?」
葵の腕を掴んでる手を引き剥がしながらにこやかに話しかけた。
「何か騒ぎが起きてると思ったらその中心に君がいるってどういうこと?」
「えっと……」
言葉に詰まる葵を見ていると腕を掴んだ兵が苦悶の表情で僕を睨んできた。
「テメェ…離せ…」
その時、もう一人の兵が剣を抜こうとしているのが見え、左手で剣を抜くとその兵の首にピタッと刃を当て十分過ぎる殺気を滲ませながらニッコリ笑いかけた。
「ちょっと待って。この子に話を聞いてるから。」
「あの…女の人がその人達に絡まれていて…止めようとしたら今度は私が絡まれて……」
冷や汗を流しながら何とか状況説明してくれたけど、ため息しか出なかった。
「はぁ…僕の時と言い…丸腰で兵…特に身分や肩書きのある相手にケンカ売ったらどうなるか分からないの?」
(きっと僕に怒られたと思って落ち込むだろうな…)
そう思ったけど、違った。
またあの力強い瞳が真っ直ぐに僕を捉えた。
「それはそうだけど…でも!身分や肩書きって本来、そういうものじゃないでしょ?
本当は強い者が弱い者を守る為にあるものでしょ!?」
思わぬ言葉に動きが止まってしまった。それは僕も周りの人達も…
(ホント君には驚かされてばっかりだ…それは本来、上に立つ者が忘れてはならない本質…帝王学の一端だ…)