第9章 口付け①(夢主side)
そのまま向かった先は廉頗将軍の屋敷。
不思議に思っていると大王の遣いという人達がやって来た。
対応したのは廉頗将軍と姜燕様と介子坊様。私と輪虎様は隣の部屋でその会話を聞いていた。
「廉頗様、輪虎将軍をお願いします。お話を伺いたいだけです。こちらに来ているのは知っています。」
「おお、確かに来ておる。」
「では……」
すると姜燕様の声がした。
「申し訳ありません。輪虎は持病の癪で寝込んでおりまして。」
「は?そんな話聞いたことありませんが?」
(持病の癪?いや、ここでピンピンしてるけど……)
思わず輪虎様を見ると必死に笑いを堪えていた。
「そうじゃった。脚気で足が結核気味とも言っておったのぅ。」
「はぁ?」
(もうメチャクチャじゃないの!?)
焦る私に対して輪虎様はお腹を抱え声を押し殺して笑っている。
「なんじゃあ?此度の事はそちらに非があると聞いたぞ。」
それは声だけで怯んでしまう気迫だった。
「しかし……」
「何ならワシらとやり合うか?」
「いえ……」
使者が帰ると廉頗将軍の前にいた。
「殿、ありがとうございました。でも、みんなして僕が癪とか脚気とか酷いな~。」
「ヌハハハ!お蔭で帰ったであろう!のぅ、輪虎…分かっておるな?」
「はは……勿論です。」
苦笑いする輪虎様に何事かと思ったらそのまま、また酒宴が始まっていた。
今回は二日酔いにならないよう、お酒は控えてジュースを飲んでいたつもりが実は果実酒だったことに気付いたのは酔いが回ってから……
フワフワしたまま外に出るとまたあの東屋に座った。
風は少し暖かくなっていて季節が夏になろうとしているのが分かった。
少し雲のかかった空は月が霞んで見える。
「またここにいる。」
声に驚いて振り返るとそこにいたのは輪虎様。
「大丈夫?酔ってない?」
「うん、大丈夫だよ。」