第9章 口付け①(夢主side)
「ちょっと待って。この子に話を聞いてるから。」
ニッコリ笑いかけていたけど、雰囲気はかなり危ない…
「あの…女の人がその人達に絡まれていて、止めようとしたら今度は私が絡まれて……」
さっきとは違う冷や汗を流しながら何とか説明した。
「はぁ…僕の時と言い…丸腰で兵…特に身分や肩書きのある相手にケンカ売ったらどうなるか分からないの?」
ため息をつかれ呆れたように言われた。
「それはそうだけど…でも!身分や肩書きって本来、そういうものじゃないでしょ?
本当は強い者が弱い者を守る為にあるものでしょ!?」
輪虎様も周りも戸惑うのが分かった。
(あれ?古代中国ではそういうことじゃなかった?)
「…なるほど。」
一言そう言うと剣を仕舞い掴んでいた手を離していた。
「そういうことだからもう止めなよ。分かった?」
危険な笑顔を兵達に向けるその姿はと私まで息を飲むほど怖く、兵達は悔しそうに舌打ちするとどこかへ行ってしまった。
「あの…ありがとう……」
頭を下げると深いため息が聞こえた。
「はぁ…君の言い分は分かるよ。本来、身分とは国やその民を守るためのものだ。だけど丸腰でケンカを売るのはもう止めてね。」
「え……」
顔を上げると困ったような笑顔だった。
「僕だって伊達に将軍やってるワケじゃないよ。あぁ……また殿の所に行かなきゃ…」
もう一度、ため息を吐くと頭をポンポンとされた。
「ケガはない?」
「あ…うん……」
さっき絡まれてた女の人がお礼を言ってきて軽く会話を交わすと手を繋がれ歩き出した。
前を行く輪虎様を見ると真っ直ぐに前を向き歩いている。
その目はさっきの雰囲気が嘘みたいな優しい目…
(身分は国や民を守るものって言ってた?この人はそんな風に思ってるの?)
思わず見つめていると輪虎様が振り返り「ん?」と首を傾げたその笑顔にドキッとして顔を逸らしてしまった。