第9章 口付け①(夢主side)
思わず微笑んでいると突然後ろから悲鳴が聞こえた。
「えっ!?」
振り返ると屈強な二人の兵に若い女性が無理矢理連れて行かれそうになっている。
「ちょっと酒の相手するだけだろ?」
「俺達は大王の私兵だ。逆らえばどうなるか分かってるよな?」
(何でこういう輩はいつの時代もいるんだろ?本当にムカつく。輪虎様もそうだったけど、身分を何だと思ってるんだろ?)
初めて会った日の事を思い出したのと、目の前の出来事にフツフツと怒りが沸いてきた。
「困ります!」
女性が泣きそうになってるのを見ると思わず叫んでいた。
「止めなさいよ!嫌がってるじゃない!」
「あ?」
兵達が私に気付くと睨みながら近付いてきた。
(しまった…これ、かなりヤバイ……)
冷や汗が出ていたけど逃げる訳にもいかなくて睨み返した。
「何だお前?」
「へ~…結構可愛いじゃないか。」
「じゃあ、代わりにお前が相手するんだよな?」
強い力で腕を掴まれると痛かった。
「離して……」
「あの女の代わりになるんだろ?来いよ。」
「やだ……」
全く力が敵わなくて引き摺られるように歩き出したその時、軽やかな声が聞こえた。
「何してるの?」
「え…?」
振り返ると輪虎様がにこやかに立っていて、いつの間にか私を掴んでいた兵の腕を引き剥がしていた。
「何か騒ぎが起きてると思ったらその中心に君がいるってどういうこと?」
「えっと……」
言葉に詰まっていると腕を掴まれた兵が苦悶の表情で輪虎様を睨んでいた。
「テメェ…離せ…」
もう一人の兵が剣を抜こうとしたその瞬間、輪虎様は音もなく左手で剣を抜きその兵の首に当てている。