第8章 告白②(輪虎side)
ふぅ…と葵が一息吐くとゆっくり話し出した。
「輪虎様…これが私の国の服です。これが私がいた時代の服です。」
しばらくの沈黙があった。…いや、ワケが分からなくて何も言えなかった。
「………えっ?」
ようやく出た言葉はこの一言だけ…
「輪虎様…私は3年前、今から約2200年後の世界、中華から海を超えた日本という国から来た人間…私の世界ではタイムスリップと言っていた。信じられないよね…私自身もまだ信じられないから…でも、嘘じゃない…嘘じゃないの……」
僕は物事の理解は早い方だと思ってたけど今回ばかりは完全に思考が停止し混乱していた。
(タイム?スリップ?2200年後の世界?海を超えた国??)
言葉が理解できなくて絶句していた。
そんな僕を見て青い顔の葵が続ける。
「私がいた世界は戦なんてなくて平和そのものだった。文明は今よりずっと発達していて世界中どこへでも行ける時代。身分の差もなく皆が平等…そんな世界から私は来たの……」
ここまで聞いてようやく停止していた思考が動き出した。
(つまり葵はこの国の、中華の人間じゃない?さらにこの時代の人間じゃない?
言ってる事は分かった…でも理解はできない。
だって人が国も時代も飛び越えるなんてことがあるのか??
……でも、事実として葵がここにいる。
葵のこの格好は紛れもなく中華の物ではない。
最初に感じた違和感がこれの為だと思えば納得はいく。
自分に向けられた遠慮ない言葉も身分のない世界から来たのだとしたら分かる気もする。
何より葵はこんな巧妙な嘘なんてつくはずがない。つく必要がない…)
ふっと体の力が抜けるのが分かった。
「そっか…どことなく違和感を感じてたのはそういうことか……」
「え……信じてくれるの?」
ずっと俯いていた葵が驚いて顔を上げた。
「うん。理解はできないけどね。それに信じて欲しくて話したんでしょ?僕にこんな嘘ついたところで何の得にもならないしね。」