第8章 告白②(輪虎side)
その日の練兵は百戦錬磨の私兵ですら半泣きになっていた。
なるべく早く帰ると言った手前、早く終わらせようと僕も必死だった。
半泣きになりながらもついてきてくれた私兵達を頼もしく思った。
戦場に立てば僕の手となり足となる…そんなこの輪虎隊の兵達を…
(葵にこんなことまで気付かされるなんてね…)
練兵場を見渡しながらそう思うと自然と笑顔になってた。
「輪虎様?何やら楽しそうですね。」
側にいた副長が話しかけてきた。
「まぁね。」
「そういえば例の宮女はお元気ですか?」
「ああ、毎日楽しそうにしている。」
「それはそれは…輪虎様も毎日楽しそうにしてらして我々も驚いています。」
「あはは、そんなに分かりやすいかな?」
「ええ、輪虎様にしては珍しく。」
確かに葵が来てから毎日が楽しい。でも、そんなに分かりやすく表に出ていたのは少し驚いた。
(ホントにあの子が来てから驚かされることばかりだ……)
思いながら騎馬するとヘロヘロの兵達の中に駆けて行った。
「よーし!もう一回最初から!これが出来たら帰るよ!ついてこない奴は斬るよーー!」
叫び出した兵を笑顔で鼓舞すると予定より早く練兵は終わっていた。
早く終わったとは言え、屋敷に帰る頃には外は真っ暗になっていた。
葵は部屋で待っていると聞いたから甲冑を脱ぎ着替えると部屋に向かった。
「葵?入るよ?」
確かめながら部屋に入ると燭台の側に葵は立っている。
それはとても奇妙な光景だった。燭台の灯りに照らされた葵は見たこともない服を着ていてどこか人間離れした雰囲気…
そのまま時が止まったかのように僕は動けなくなった。
どんな苛烈な戦場でも、どんな強敵を前にしてもこんなこと一度もなかった…
「……葵?」