第5章 自覚①(夢主side)
ようやく動けるようになると廉頗将軍や四天王の方々に挨拶をして帰ることが出来た。
王都の街をゆっくり歩いていると色々な店が溢れている。
屋台もたくさんあって見ているだけでワクワクしてきた。
「珍しい?」
キョロキョロしていると声をかけられた。
「うん!見たことないものがたくさんあって楽しいよ!」
満面の笑みで答えた。
またしばらく歩くとある店先で足が止まった。
そこは髪飾りやイヤリング等が置いてあるアクセサリーの店。
その中にあるイヤリングに目が止まったから。
それは小さな葵の花を型取ったもの。
葵の花は私の母が好きな花だった。だから、見ていると母を…現代を思い出す…
輪虎様と過ごすようになって忘れかけていた寂しさが甦った。
寂しい気持ちで見とれていると輪虎様の手が伸びてきた。
驚いて顔を上げるとそれを手に取り耳に付けられていた。
「可愛いよ。」
またサラッと可愛いなんて言われ、輪虎様の温かい手が耳に触れていて真っ赤になるのが分かった。
「あの……」
「これ、貰うね。」
私が何か言う前にお金をさっさと渡していた。
「え…ちょっと……」
「他に何か欲しいものある?」
「これも悪いから…」
「いいの。僕がしたいだけだから。」
ニッコリ微笑まれると素直に貰っていいのかな?…そう思ってしまった。
「あの…ありがとう…大切にするね。」
「どういたしまして。じゃあ、行こうか。」
そう言うと手を繋がれた。