第4章 早駆け②(輪虎side)
「分かった。慣れるまで『様』を付けていいから。で、何?」
「えっと……将軍である輪虎様が王宮の下女を拐ったりしたら何かしら問題なんじゃないかな?って……」
(へ~…なかなか鋭いね。確かに宮女は例え将軍であっても簡単に手出し出来ない。でも、君を帰したくないんだよな…ま、後宮の宮女じゃないからどうにかなるか。)
そんな事を考えていると葵の少し不安そうな顔が見えてニッコリ微笑んだ。
「う~ん…そうかもね。でも僕が問題と思ってないから大丈夫。」
「輪虎様って、嘘をつくのが下手なんだね。でも騙されておきます!」
そう言って葵は笑顔になってたけど僕は凄く驚いた。
はっきり言って僕は嘘は上手い方だと思ってる。
今まで見破られた事はないし、何より将はどんなに苦境でも兵達を鼓舞するために嘘を付いてでも笑っていないといけない場面もある。
それを一瞬で見破られた。本当に新鮮な驚きだ。
(今まで感じた事のない感情を抱かせるこの子から目が離せなくなってるのかもしれないな……)
笑顔の葵を見てそんな事を考えながら近くの木の下に座った。
「ねぇ、座りなよ。」
声をかけると素直に横に座ってくれた。
「いい天気だね…」
「うん…」
そこで言葉は途切れしばらく沈黙が続いたけどそれすら穏やかな心地よい時間。
時々吹く風の音…小鳥のさえずり…
(こんな穏やかな時間初めてかもしれないな…
殿の元に来てからずっと剣を握って…戦場を駆け巡って…それも楽しかった…
けど……こんな時間も楽しいもんなんだ…心安らぐってこういうことなのかもね……)
ぼんやりそんなことを思っているといつの間にか眠っていた。