第35章 一歩②(輪虎side)
「いいんじゃないの?体の自由が利かないと言ってもあの輪虎だ。回復すればそこらの将よりは上だろ?そんなヤツが飛信隊に入るなら秦にとって悪い事ではないだろ。今は信用は出来なくても信頼は出来るんじゃない?
それに何かあったら信が責任取るんだろ?信が千人将剥奪にでもなったら俺達は争う相手が一人減って助かるし。」
そうニヤッと笑って王賁を見ている。
「…ふんっ。俺の玉鳳隊には関係ないことだ。勝手にしろ。ただし変な動きを見せたらすぐに首を貰うからな。」
王賁からは槍を向けながら吐き捨てるように言われた。
「ま、俺も本心は王賁と同じだよ。信、頑張れよ。」
蒙恬は王賁の肩を叩きながら信を見ている。
「輪虎………殿…我々はカク備千人将のことをなかったことにはできません……しかし、隊長である信殿が決定したことには従います。貴方が信用に値する人物かはこれから判断させてもらいます。」
疎水副長からはまだ怒りが滲み出ていた。それでも何とか受け入れようとしてくれていた…
渕副長はその様子を黙って見ていたが一言「我々は信殿を信じて着いて行くだけです」と言ってくれた。
「うっし!それでこそ飛信隊だ!大丈夫だ!輪虎!顔上げろ。」
「ああ、ありがとう。大丈夫。必ずみんなに認めさせるから。」
信は笑顔で僕もそれに笑顔で応えた。
すると何故か信が驚いている。
「お前、結構素直なんだな…ただのひねたガキにしか見えなかったのに…」
「は~…だから僕は30代だって前も言ったよね?君にガキ呼ばわりされる覚えはないよ。」
その瞬間、時が止まった。