第33章 抱擁②(輪虎side)【R18】
その姿にこの二人は大王と将という関係以上のものがある。言うなら親友、戦友のような…そう直感した。
大王が再び僕の方を向くと力強い目で真っ直ぐに射抜かれた。
「輪虎、覚えておいて欲しい。俺が目指しているのは中華の統一だ。」
「なっ………」
あまりのことに言葉が続かなかった。
「歴史上誰もなし得なかったことを俺はやろうとしている。信はその思いを共に成そうとする者だ。だから信を支えるのであればそのつもりでいてくれ。」
まさかこの若い大王がそんなことを考えているなんて夢にも思わなかった。
だが、その力強い瞳の理由が分かった気もした。
「なるほど…道理で戦場で剣を交えた時に苦労した訳です…ふふっ、おまかせ下さい。心よりお仕えさせて頂きます。」
そう笑顔で頭を下げもう一度拝手した。
「飛信隊はこれでまた一つ強くなったな。」
大王のその言葉に信は笑っていた。
葵の所に戻ると羌瘣と貂と楽しく話している最中だった。
「輪虎!もういいの?」
満面の笑みで僕の方に駆け寄って来た。
「うん、終わったよ。明日からまた忙しくなるけどごめんね。」
そう頬に手を添えると貂と羌瘣がコソコソ話す声が聞こえた。
「な、なぁ…こういうの二人の世界っていうのか?」
「そう…みたいだな…私は戦場でこいつを見たけどこんな奴じゃなかった…」
すると信が叫んだ。
「お前ら!イチャイチャするなら帰ってからにしろ!」
何故か信も葵も真っ赤になっていた。
「ふふっ、だから何想像してるの?ホントやらし~」
「なっ!だから!何も想像してねぇ!!」
そんな軽いやり取りに笑ってた。久しぶりに声を出して笑っていた…
(久しぶりだ。こんなに楽しい時間……)
「あ、そうだ。羌瘣、あれ返してやれ。」
「分かった。」
そう言って羌瘣が出してきたのは僕の剣…