第32章 抱擁①(夢主side)【R18】
「まぁな。と、言っても納屋みたいな小さい所だけど。
なあ、輪虎……俺達は元々敵同士だったけどこれからは仲間だ。色々思うこともあるだろうけどあんまり思い詰めるなよ。今日からは俺が上官だ。何でも相談してくれていいぞ!」
「う~ん…気持ちは有難いけど相談する時は羌瘣や貂の方がいい気がするから遠慮しておくよ。」
真剣な信に対して輪虎はいつものようにニッコリ微笑んでいる。
「あはは!やっぱり元将軍だな。よく分かってる。」
貂がからかうように笑った。
「輪虎~…貂~…俺は隊長だぞ!千人将だぞ!」
「オレは軍師だ。万の兵を動かすことができるぞ。」
「僕は元将軍で万の兵を率いて戦って勝利してきたよ。」
この後、信が暴れ出し羌瘣に怒られていてそれも面白かった。
信に案内された家は王都内にあった。
確かに小さかったが必要最低限のものは揃っていて本当に安心した。
「良かったね。」
笑顔で輪虎を見ると輪虎もまた微笑んでいた。
「ねぇ、葵。どうして羌瘣について行こうと思ったの?どうして信じて大丈夫だと思ったの?」
とても不思議そうに聞かれたけど、正直私もよく分からなかった。ほとんど直感だったのだから。
「う~ん…あの方が悪い人だとは思えなかったから。実際話してみるととても良い方だったよ。それに時々見せる女性らしいところとか可愛かったし。ふふっ。」
「えっ?女!?」
思わぬ答えに私が驚いた。
「えっ?うん…秦国には女の武将が多いのかな?気付いてなかったの?」