第32章 抱擁①(夢主side)【R18】
すると貂と羌瘣がコソコソ話す声が聞こえた。
「な、なぁ…こういうの二人の世界っていうのか?」
「そう…みたいだな…私は戦場でこいつを見たけどこんな奴じゃなかった…」
その時、信が叫んだ。
「お前ら!イチャイチャするなら帰ってからにしろ!」
何故か信も真っ赤になっている。
「ふふっ、だから何想像してるの?ホントやらし~」
「なっ!だから!何も想像してねぇ!!」
見ると輪虎が笑っていた。声を出して…それは久しぶりに見る明るい表情、笑い声…
(輪虎が笑ってる…秦に来たのは間違いじゃなかったのかな…)
少ししんみりしていたけど、会話は続いていた。
「あ、そうだ。羌瘣、あれ返してやれ。」
「分かった。」
そう言って羌瘣が出してきたのは輪虎の剣…
「一本は俺が持ってた。これはお前の大事なヤツなんだろ?返す。」
「いいのかい?ありがとう。左手で握るのは難しいけどやっぱり二本ないと落ち着かないや。」
少し戸惑いながらも剣を受け取った輪虎は二本の剣を腰に差した。
久しぶりに見た剣を持つ姿は何も変わってない…
(ああ…いつもの輪虎だ。いつも見ていた…)
その剣に手を添え輪虎は何か考えているようだ…
どこか寂し気な横顔を見ていると信の元気な声が聞こえた。
「よし!じゃ、お前らの家に案内してやる。」
「家?そんなものまで用意してくれたのか?」
私もその言葉に驚きとそこまで考えていてくれたことに感謝しかなかった。