第3章 早駆け①(夢主side)
(将軍だからそれくらいは知っているはず。やっぱり問題だよね……)
そんなことを思っていたけど返ってきたのは笑顔だった。
「う~ん…そうかもね。でも僕が問題と思ってないから大丈夫。」
(ふふっ…嘘だ。この笑顔は何か隠してる。意外と分かりやすいんだ…可愛いかも……)
「輪虎様って、嘘をつくのが下手なんだね。でも騙されておきます!」
そう言ったら私も笑顔になってたけど輪虎様は驚いたような表情を見せた。
(上手く嘘をついたつもりだったのかな?)
色々な表情を見せるこの人から目が離せないかもしれない…そう思い始めていた。
すると輪虎様がすぐ近くの木の下に座り私を見上げた。
「ねぇ、座りなよ。」
促されるまま横に座った。もう輪虎様に対する抵抗感はない。
「いい天気だね…」
「うん…」
しばらく沈黙が続いたけどそれすら穏やかな心地よい時間。
時々吹く風の音…小鳥のさえずり…
(こんな時間、久しぶりだな…この世界に来て初めてかも……)
ぼんやりそんなことを思っていると不意に輪虎様の頭が私の肩に乗ってきた。
「え……」
驚いて横を見ると綺麗な寝顔が見え静かな寝息が聞こえてきた。
(えっと……これはこのままの方がいい?起こしたら悪い…よね?)
一気に心拍数が跳ね上がって顔が赤くなるし、緊張で固まっていた。
それでも輪虎様がもたれてる右肩が熱い…
もう一度、チラリと寝顔を見るとその寝顔はあどけなささえ感じる。
(この人いくつなんだろ?将軍って言ってた割には随分若く見えるけど……)
思わず見とれているとやや赤みがかった柔らかな髪が頬をくすぐってまたドキッとした。
(こんな人が将軍?戦場に立ってたの?
たぶんモテるんだろうな…そっか…だから私を拐ったりしても平気なんだ…よく聞くお戯れとか気の迷いってやつか…)
そこまで考えると何故か寂しくなった。
それはこの笑顔や優しさが他の人にも向けられていると思ってしまったから…