第32章 抱擁①(夢主side)【R18】
輪虎が飛信隊隊長の信と行ってしまうと一人でどうしよう…と少し不安になっていた。
羌瘣と可了貂がいたけど、言ってもこの二人も飛信隊の武将と軍師…段々、緊張してきた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だ。あ、オレのことは貂て呼んでくれたらいい。葵…だったっけ?」
明るい声で話しかけてくれたのは貂。顔を上げると笑顔だった。
「あ…はい。あの、信隊長はどこに行かれたのですか?」
「そんな堅苦しい言い方もいらないよ。ウチの飛信隊はそんな集まりじゃないから。信は政のところだ。」
「政?」
首を傾げると羌瘣が答えてくれた。
「秦の大王だ。輪虎は仮にも敵将軍だった。そんな奴を飛信隊に入れるには必要なことだ。まぁそれだけじゃないが……」
「そう…なんだ…」
含みを持たせた言い方が気になったけど、聞いてはいけないような気がしてそれ以上何も言えなかった。
「まぁ、とりあえずアイツらが帰ってくるまでお茶でも飲んでよう。」
貂がお茶を出してくれるとそこからは他愛ない話で盛り上がった。
私も久しぶりに同世代の女の子と楽しく話しをした気がする…
しばらくそんな時間が過ぎると輪虎が階段から降りて来るのが見えた。
「輪虎!もういいの?」
満面の笑みで輪虎に駆け寄った。
「うん、終わったよ。明日からまた忙しくなるけどごめんね。」
頬に手を添えられると顔が赤くなるのが分かる…