第31章 再会②(輪虎side)
翌朝、羌瘣に連れられ葵と共に王宮本殿へ向かった。
旅の間にも回復はしていて体は随分動くようになりようやく普通に歩けるようになった。
本殿の大きな外階段を上ると踊場に信の姿が見えた。
「よー、羌瘣。ご苦労だったなー。」
陽気に声をかけた信が僕を見つけた。
「輪虎……お前ホントに生きてたんだな…」
「君のお蔭で体はボロボロだけどね。こんな所まで連れてきてどういうつもりだ?」
お互いかなりの殺気を纏っていたその時、軽やかな声がした。
「こら!何の為にわざわざ羌瘣に頼んで連れてきてもらったんだ!殺気を出すな!」
そう言ったのは小柄な女の子。
「分かってる!」
すると信が真剣な表情で真っ直ぐに僕を見てきた。
それはあの戦場で見た葵によく似た目……
「……なあ、輪虎……お前はホントに強かった。俺が越えなきゃならねぇ壁だった。その壁を俺は越えたと思ってる。輪虎…秦に、飛信隊に来ないか?」
本当に驚いた。まさか信からそんなこと言われるなんて思ってもみなかった。
軽くため息をつくと言葉を紡いだ。
「何を言い出すのかと思ったら…僕はもう戦場には立てない。左手は動きが鈍いし体も戦場で動ける程には回復しないと思ってる…何より…僕は敵将だよ?」
ぎゅっと右手を握り信を見た。
「分かってる…だから飛信隊の練兵や文官みたいなことをして飛信隊を支えてくれたらいい。片手でもあんだけ強ぇし、それにあの廉頗の四天王だったんだろ?絶対頭もいいだろ?
確かに、お前が敵将だったことは変えられない事実だ。でも、俺の飛信隊はそれを飲んでもお前が欲しい。」
すると小柄な女の子がクスクス笑いながら言った。
「大概の将はお前より頭いいと思うぞ。」
「うるせー!お前は黙ってろ!どうする?輪虎。」
信は笑顔だった……
あの戦場で戦乱の世の世代交代を感じた…何よりこの子はあの時よりも確実に大きくなって大将軍への階段を登っている…そうひしひしと感じた。
それに…らしくないが、この子の成長を側で見ているのも面白いと思ってしまった。