第31章 再会②(輪虎side)
葵の後ろに乗るとそっと腰に手を回した。
「国境までは飛ばすぞ。しっかりついて来い。」
羌瘣が馬を走らせるとその後ろを葵がついて走り出した。
「しっかり掴まっててね。」
まさか僕が葵の後ろに乗る日が来るなんてな…そう思わずにはいられず苦笑いしていた。
正直、早駆けは体に堪えた。
それでも休憩した時に葵は薬湯を飲ませてくれたり包帯を巻き直したりしてくれた。
羌瘣はそんな僕らの様子をじっと見ていた。
葵は羌瘣にも物怖じすることなく話しをし、羌瘣も言葉通り時々襲ってくる夜盗や警備兵を蹴散らしてくれた。
半月程かけて国境まで来た。
その頃には葵と羌瘣はすっかり打ち解けているようで二人ともよく笑って話をしていた。
時々二人で何やら内緒話もしていたけどそれも微笑ましい姿だ。
かなり距離も近く、普通なら嫉妬しそうなものだが、何故かその感情は生まれなかった。その訳は咸陽に着いてから知ることになる…
秦国の領土に入ってからは進みはややゆっくりになり、お蔭で体は随分ラクになった。
後で知ったが葵が羌瘣にゆっくりにして欲しいと掛け合ってくれてたらしい。
そしてさらに半月以上かけて秦国王都・咸陽に着いた。
咸陽に着いたのは真夜中。王宮内のある部屋に通された。
「今日はもう遅い。ここを使え。ただし剣は預かる。表には見張りを付ける。」
羌瘣はそう言うと僕の剣を持って出ていった。
部屋は簡素だったが久しぶりにゆっくり休めると思いホッとして葵を見ると顔が真っ青だった。
「葵!?どうしたの?真っ青じゃない!?」
「ちょっと疲れたのと安心したみたいで…」
そう言うとふっと体から力が抜けたようで倒れかけた葵を支えそっと寝台に寝かせた。
「ごめんね。無理させて…ゆっくり休んで。」
葵はそのまま眠っていて、僕はそんな葵を抱き締めて久しぶりにゆっくり眠った。