第31章 再会②(輪虎side)
「どういうつもりだ…」
「それを持ってついて来い。信が呼んでいる。」
「意味が分からないが…」
久々に纏う殺気だった。
「そんなに殺気を出すな。お前とやり合う気はない。信が何を考えているのかは私にも分からない。ただお前の生死を確かめて生きていたら連れて来いと言われた。」
訳が分からなかった。なぜ信が僕を呼んでいるのか、なぜ僕が生きていることを知っているのか…完全に混乱し言葉が出なかった。
すると葵が前に出た。
「どこへ行くの?貴女を信じていいということに値するものはあるの?」
真っ直ぐに羌瘣を見る目はあの力強い瞳だった。
「咸陽……秦国王都だ。信じられなければそれでいい。ただ、もしついて来ると言うなら確実にお前達を守り信の元へ届けてやる。」
相変わらず言葉が出ない僕に葵が振り返った。
「輪虎…行こう。」
「え……?」
「どちらにしてももうここには居られないでしょ?だったらこの人について行こう。」
すごく戸惑ったけど、それも選択肢の一つかと思い改めて羌瘣を見た。
「分かった…お前について行く。ただし、葵も一緒にだ。二人だが大丈夫か?」
「その娘は葵と言うのか。いいだろう。二人とも確実に守ってやる。急げ、夜が明ける。」
そう言われ身につける物だけを持って出た。
「馬には乗れるか?」
そう羌瘣に言われ気付いた。
今の僕の状態ではとても葵を連れて馬なんて乗れない…
「輪虎、大丈夫だよ。私の後ろに乗ったらいいよ。」
葵は笑顔だった。
「お前、馬に乗れるのか?」
「はい。輪虎に教えて貰ったので。」
「お前面白いな。」
驚きながらもふっ…と羌瘣が笑った気がした。