第31章 再会②(輪虎side)
一月程してようやく起き上がれるようになったが、すっかり筋力は落ちてしまって歩くのも大変だった。
屋敷には下僕も下女もいなくなっていたから食事、掃除、洗濯等すべて葵がしていた。
一人で大変そうだったが葵は毎日楽しそうにしていていつも笑顔だった。
そんな葵に申し訳なさを感じていたがその笑顔に助けられた。
そろそろ動けるようになってきたから次のことを考えないといけない…
(やはり殿のいる楚に行くべきか…でも殿のお側にいてもこの体ではお役に立てない…ならばここ魏で農民にでもなってひっそり暮らそうか…)
そんなことを日々考えていた。
葵にはまだ何も言わなかったが僕が考えていることは分かっていたらしい。
「輪虎が決めたことならどこへでもついて行くよ。私の居場所は輪虎の横だから…」
そう笑顔で言ってくれた。
そんなある日の夜。
いつもの様に葵と並んで寝ているとただならぬ雰囲気を外から感じて飛び起きた。
「…何だ?」
剣を手に取るとまだ上手く動かない体を引き摺るように外に出た。
そこにいたのは一人の将…その姿には見覚えがあった。
「お前は…飛信隊の…!!」
「羌瘣だ。」
「何しに来た……改めて首を取りにきたのか…?」
その時、葵が起きてきた。
「輪虎…?どうしたの?」
(まずい!今の僕の状態じゃ確実に守りきれない!)
焦りながらも必死に葵を後ろ手に隠し羌瘣と対峙した。
すると突然何かを投げてきた。地面に刺さったそれは確かに僕の剣…