第30章 再会①(夢主side)
翌朝、羌瘣に連れられ輪虎と共に王宮本殿へ向かった。
輪虎の体は随分動くようになっていて普通に歩く分には問題なさそうに見えた。
階段を上ると踊場に一人の男の人の姿が見えた。
輪虎よりきっとずっと若い将…体つきはがっしりしてるけど目はとても優しい人だ。
「よー、羌瘣!ご苦労だったなー」
笑顔で陽気に声をかけてきたけど輪虎を見た瞬間顔付きが変わり、同時に輪虎の顔色が変わるのも分かった。
それで分かった…この人が輪虎を討った飛信隊・信だと。
「輪虎……お前ホントに生きてたんだな…ただの噂だと思ってた……」
「君のお蔭で体はボロボロだけどね。こんな所まで連れてきてどういうつもりだ?」
輪虎も信も殺気を纏っているのが犇犇と伝わったその時、軽やかな声がした。
「こら!何の為にわざわざ羌瘣に頼んで連れてきてもらったんだ!殺気を出すな!」
そう言ったのは私とそんなに変わらない年の小柄な女の子。
「分かってる!」
すると信が真剣な表情で真っ直ぐに輪虎を見た。
それはまるであの廉頗将軍のような力強い目……
「……なあ、輪虎……お前はホントに強かった。俺が越えなきゃならねぇ壁だった。その壁を俺は越えたと思ってる。輪虎…秦に、飛信隊に来ないか?」
本当にビックリした。自分が討ち取った相手を仲間にしようとするなんて。
でも信の目は本気だと分かる。綺麗で力強い目で真っ直ぐに輪虎を見つめていたから。
一瞬、輪虎が息を飲むと話し出した。
「何を言い出すのかと思ったら…僕はもう戦場には立てない。左手は動きが鈍いし体も戦場で動ける程には回復しないと思ってる…何より…僕は敵将だよ?」
輪虎の右手が強く握られているのが見えた。
私も輪虎がまた戦場に行くことになるのは嫌だ…