第30章 再会①(夢主side)
早駆けは輪虎の体には負担になっていたようで心配だったけど、急がないといけないのは分かっていたから休憩の時には薬湯を飲んでもらい包帯も変えてなるべく休めるようにした。
羌瘣と名乗ったその人はあまり話さない人だったけど話しかけると丁寧に答えてくれて時々見せる笑顔が可愛い女の人だった。
でも、時々襲ってくる夜盗や警備兵をあっという間に蹴散らしたりしてとても強い人で女性なのにこんなに強いなんてスゴいな…と純粋に思っていた。
半月程かけて国境まできた。
その頃には羌瘣と打ち解けれたようで優しい顔をよく見るようになった。そして色々話してくれた。
羌瘣は飛信隊の副長で、その隊長・信が輪虎を討ったと。自分も輪虎隊に痛い目にあったと笑いながら話してくれた。
私が普段の輪虎の様子を話すと驚いていて戦場ではやっぱり私が想像もできないような姿なんだと知らされた。
秦国の領土に入ってからは羌瘣にお願いして進みをゆっくりにしてもらうと輪虎も少し楽そうにしていて安心した。
そしてさらに半月以上かけて秦国王都・咸陽に着いた。
咸陽に着いたのは真夜中で王宮内にある部屋に通された。
「今日はもう遅い。ここを使え。ただし剣は預かる。表には見張りを付ける。」
羌瘣はそれだけ言うと輪虎の剣を持って出ていった。
部屋は簡素だったけど久しぶりにゆっくり休める…やっと着いた…そう思ったら今までの疲れが一気に出てきた感じがしてフラフラしてきた。
「葵!?どうしたの?真っ青じゃない!?」
輪虎の驚く声がしたけど何だか遠くに聞こえていた。
「ちょっと疲れたのと安心したみたいで…」
そう言うとふっと体から力が抜けて立ってられなかった。
そんな私を支えてくれるとそっとベッドに寝かせてくれた。
「ごめんね。無理させて…ゆっくり休んで。」
そのまま私は深い眠りについていた。
輪虎はそんな私を抱き締めて眠ったけど私は既に夢の中だった。