第30章 再会①(夢主side)
「そんなに殺気を出すな。お前と殺り合う気はない。信が何を考えているのかは私にも分からない。ただお前の生死を確かめて生きていたら連れて来いと言われた。」
(信……て誰?どうして輪虎が生きていると知ってるの?そしてどこに連れて行こうとしているの?)
分からないことだらけだった。でも相手から殺気は出ていない。
輪虎も混乱しているようで言葉が出ないようだった。
「どこへ行くの?貴女を信じていいということに値するものはあるの?」
思わず前に出て真っ直ぐに相手の目を見た。
「咸陽……秦国王都だ。信じられなければそれでいい。ただ、もしついて来ると言うなら確実にお前達を守り信の元へ届けてやる。」
(秦国……?魏が戦っていた国だったはず…輪虎を討った相手がいる国に来いってこと…?)
チラリと後ろを振り返ったけど輪虎も戸惑っている。
(でも……もうここには居られないよね…それに廉頗将軍のところに行くという選択肢もあるけど、そうしたらきっと輪虎は敗戦の責めを一人で負って一生苦しむはず……
それに分かる。この人は嘘はついていない……)
だったらこの人を信じてみてもいいと思った。
秦国がどんなところか、輪虎を呼んだ信って人がどんな人か知らないけどきっと大丈夫…そんな気がした。
輪虎に向き合うと笑った。
「輪虎…行こう。」
「え……?」
「どちらにしてももうここには居られないでしょ?だったらこの人について行こう。」