第28章 帰還①(夢主side)
残った兵が輪虎を部屋まで運んでくれるとその中にあの副官がいて半泣きで土下座してきた。
「輪虎様をお守りできず申し訳ありませんでした!」
突然のことにビックリしてオロオロしてしまった。
「あ、あの貴方のせいではないので…あの顔を上げてください…」
そう言ったけどそのまま動かないから困り果てていると思い出したように副官が輪虎の剣を一本渡してくれた。
もう一本は戦のどさくさに紛れて無くなってしまったと…
副官達が帰るとその剣をぎゅっと抱き締めた。
(輪虎がいつも大切にしていた剣…目覚めたら渡さないと…一本しかないと輪虎は悲しむかな?)
でも何故かもう一本も輪虎の元に戻ってくる…そんな予感がしていた。
眠っている輪虎はやはり真っ白な顔をしていて身動きひとつしていない。
手を握ると指先が冷たかった。
お守りを左手に握らせて冷たい手を温めるように握った。
「輪虎…お帰りなさい…でも起きてくれないと帰ってきた意味がないよ…」
そう言って久しぶりに輪虎の側で夜を過ごした。
翌日からは体が嘘みたいに軽くなった。
意識のない輪虎の為、毎日体を拭いて包帯を巻き直した。
胸に3ヵ所、左腕に1ヵ所大きな傷があって、きっととても強い将を相手に戦ったのだろうと想像できた…
食事は摂れないから水分や重湯、薬湯を綿に含ませて口に入れていた。口に入れると少しずつだけど飲んでくれてた。
そして、毎日話しかけた。
天気のこと、街の様子、馬のこと…反応はなかったけどきっと聞こえていると思って…
そんな日々が続いたある日、廉頗将軍の遣いと言う兵が屋敷に来た。
それは、廉頗将軍が敗戦の責めを負って魏国を出て楚へ亡命するとのことだった。
姜燕様、介子坊様も共に行かれると。
輪虎も責めを負わなければならず、動けるようになったら出ていかなければならないとのことだった。
厳しい処分がだったがそれでも廉頗将軍は約束通りこの屋敷は残してくれた。
それだけで感謝しかない…
最後の挨拶をしたかったけど私の知らない間に魏国を出ていた…