第26章 別離②(輪虎side)
ここの戦場では信以外にも有望な若者がいた。
一騎討ちをすることになった玉鳳隊・王賁。
彼の槍捌きは大したものだった。
今回は経験がある分、僕に分があったが彼も経験を重ねることで大きくなりそうだ。
そして直接剣は交えなかったけど僕の大事な私兵の半分近くを殲滅してくれた楽華隊・蒙恬。
彼はどうやら相当頭が切れるらしい。
どうすれば将軍首である僕を最前線に引きずり出してこれるかよく分かっている。
正直驚いた。秦国にもこんな若い芽が育ってきているのかと。
楽華隊によって僕の大事な私兵が痛い目に合わされたその日、初めて信と剣を交えた。
本当に不思議な子だった。
どんなに僕が有利で勝ち目がないように叩いても驚くほど真っ直ぐに向かって来た。
その目は常に力強く決して光を失わなかった。
こういう子は得てして天に愛されてる子だ。
数々の大将軍がそうであるように…
この子は将来必ず化ける。
今は千人将にとても見えないが大将軍にもなれる器を持った子…戦いの中でそんなことを考えていた。
そんな信から僕は一太刀浴びてしまった。
左腕の腱をやられたみたいで左手が上手く動かなくなった。
あまりいい傾向ではない。やはり何かが違う……
それでも僕は前に進まなければならない。
殿の元へ、その先の葵の元へ帰るため…