第25章 別離①(夢主side)
それから数日後…屋敷に廉頗将軍がやって来た。
「ワシらも明日出陣する。」
それはあの威圧感そのままに告げられた。
「はい…」
「それで、これは輪虎からじゃ。自分が出る時には間に合わなかったからワシから渡してくれと頼まれた物じゃ。」
俯いていたが顔を上げ渡された物は玉(ぎょく)。
よく見るとそこには四つ葉のクローバーが彫られている。
「これは……?」
ふっ…と微笑まれた。それは初めて見た優しい眼差しだった。
「その葉にどんな意味があるかは知らぬ。じゃが、うぬを想って用意したものには違いない。まぁ、このワシを使うとは大したもんじゃがのう!ヌハハハ!」
四つ葉のクローバーは幸運の象徴…そんな他愛ないことを輪虎は忘れず覚えていてくれた。
(きっとこのクローバーは私と輪虎を繋ぐもの…大丈夫…信じれる…)
玉(ぎょく)を抱き締め涙が溢れた。
廉頗将軍も出陣するとそこからは何の音沙汰もなかった。
当然だけどネットもテレビもない世界。
戦の状況も輪虎の状況も知る術はなかった。
毎日、毎日空を見上げて無事を祈ることしかできなかった。
この空は必ず輪虎のいる戦場にも繋がってる…だからきっと戦場でも同じ空を見上げているはず…だから私の思いも届くはず…そう信じていた…
それでも輪虎のいない日々は寂しくて悲しかった。
特に夜が長くてなかなか眠れなかった。
夢もよく見ていた。いつも一緒の夢…