第24章 約束②(輪虎side)
翌日からはバタバタと出陣の準備を進めた。
それでも、どんなに忙しくても葵との時間は作るようにした。
不思議なことに葵も何か準備しているようだった。
そして出陣前日……
朝、葵を起こしに行った。
「葵!出掛けよう。いい天気だよ!」
「えっ?でも明日出陣なのに?」
突然のことに葵はまた驚いていたが僕は笑顔だった。
「明日出陣だからだよ。今日は私兵達にも休暇を取らせた。僕は今日は葵と過ごすと決めてたんだ。」
戸惑う葵を促すと二人並んで馬を走らせた。
「やっと二人並んで走れたね。輪虎と同じ景色が見れたよ!」
葵の笑顔に僕もいつの間にか笑ってた。ようやく見れた葵と同じ景色はとても綺麗だ…
「そうだね。いい景色だ…」
そのままあの丘にやってきた。シロツメクサはなくなっていたけど代わりに夏の花がたくさん咲いている。
「やっぱり綺麗なところだね。」
景色を見渡して葵は笑顔だ。そんな葵にまたお願いをした。
「ねぇ、葵。膝枕…してくれる?」
「いいよ。」
少し驚きながらも笑顔で答えてくれた。
膝枕され見上げた先にはいつもの優しい葵…その先には夏の雲が見える青空…
(綺麗だな…ずっとこうしていられたらいいのに……)
そんなことを思いながら落ちるように眠っていた。
どれくらい経っただろうか…葵の歌声が聞こえてきた。そっと髪を撫でられながら…
「相変わらず綺麗な歌声だね。」
僕のその声に葵が驚いていた。
「…っ!起きてたの?」
「さっきね…葵の歌声で目が覚めた。」
手を伸ばすと頬に手を添えた。その頬はいつもの温かい肌だ。
「ごめん…起こしちゃったね…」
「気にしないで。そろそろ起きないとダメだったしね。」
そう言って寝返りをうつと葵の腰に手を回してきてぎゅっと抱き締めた。
「輪虎…?」
どうやら予想外の行動だったらしく戸惑うのが分かった。
「ん~…明日からしばらくこんなこと出来ないから…」
「そうだね……」
(こんな風に甘えるのは初めてかも知れないな…でもね、君の全部が愛おしいんだ…)