第24章 約束②(輪虎side)
葵が近付きそっと髪を拭いてくれた。
「………出陣…するんだね…」
静かなその言葉に一瞬、止まってしまった。
「…知ってたんだ。3日後、山陽向けて出陣する。」
「秦国が攻めてきたと嫌でも耳にするから…それに、輪虎のその様子を見たらすぐに分かるよ…3日後ってすぐだね…」
僕を見つめるその顔は泣きそうで僕まで悲しくなってくる…
「うん…殿はもう少し後なんだけど、僕は先に出てしなきゃいけないことがあるんだ…ごめん……」
何とかそれだけ言うとぎゅっと抱き締め、葵も抱き締め返してくれていた。
「謝らないで…いつかこんな日が来ると思ってたから…」
その体は小さく震えている。きっと僕が戦に行くことへの不安と恐怖…
「震えてるね…」
「…少し寒くて……」
それはすぐに分かる小さな嘘…それでもそこは触れてはいけないこと。
ふふ…と小さく笑うと葵と目が合い、そっと頬に手を添えた。
「葵が前に言ったよね?身分や肩書きは強い者が弱い者を守る為にあるって…」
「え……」
「今までは殿の為に、殿のお側で戦いたくて戦に出てたけど今度は違う。君を守るために僕は出るよ。」
葵の目から涙が溢れそうなのが見えると僕の胸にぎゅっと顔を埋めてきた。
その肩は震え、服が温かい物で濡れるのが分かった…
そんな葵を抱き締めて頭を撫でていた。何も言わずにずっと……