第24章 約束②(輪虎side)
また髪を優しく撫でられると泣きそうで無理矢理起き上がり思いっきり伸びをした。
「よし、帰ろうか。」
寂しそうな葵に僕も寂しい…穏やかな楽しい時間はすぐに終わってしまう。
すると葵が何かを出してきた。
「あの…輪虎…」
「ん?なぁに?」
「これ…持って行ってくれない?」
そう言って差し出されたのは小さな巾着。
初めて見る不思議な物に首を傾げた。
「これは?」
「お守りって言う物。私の国にあった大切な人の無事を祈るおまじないみたいなものかな?」
「へ~お守り…玉(ぎょく)みたいなものだね。」
不思議そうにそれを見ているとそこに似顔絵と四つ葉のクローバーと言っていた葉が刺繍されていることに気付いた。
「この顔もしかして…?」
「そうだよ…輪虎のつもり。全然似てないけど…」
恥ずかしそうにしている葵が本当に可愛い…そして愛おしい……
「ふふっ、葵には僕こんな可愛い顔に見えてたんだ。この反対側は前に言ってたクローバーだよね?」
「うん…戦場で輪虎に幸運が訪れますようにって意味で……」
「そっか…」
「あと、中にシロツメクサの押し花も入ってるの。花言葉は約束…だから、約束して!ちゃんと帰ってくるって…」
泣きそうになりながら話す葵に僕まで泣きそうでふわっと抱き締めた。
「うん…約束する。ちゃんと帰ってくるよ。ありがとう…明日、身に付けて行くね…」
その夜、葵をいつも以上に優しく抱いた。
葵の全てを忘れないように…葵が僕の全てを忘れないように…
お互い抱き締め合い、幾度となく「愛している」と囁き合いながら…
意識を手放した葵の頬には涙が流れていた。
それは確かめ合った愛のものなのか、明日の別離のものなのか、そのどちらともなのか……
そのままきつく抱き締めながら最後の夜を越えた。
眠ってから僕は涙を流していた。それは誰も知らないこと…
そして別離の朝が明けようとしていた……