第24章 約束②(輪虎side)
それから暫くは穏やかな日々が続いた。
後からこういうのを『嵐の前の静けさ』と言うんだと知らされた。
その日、激しい嵐が魏国を襲った。横殴りの雨と雷…
そんな嵐がもたらした急報は秦国の魏国進攻。
嵐の中、王宮に呼ばれた。
「こんな雨の中、やだな~…」何て言いながら笑ったけど葵の顔色が青いことなんてすぐに分かる。
きっと僕が戦に行くと思って不安なんだろうけど、正直殿はもう戦には出ないと思っていた。
最後の六将・王騎がいなくなり、初代三大天も殿を残すのみ…六将も三大天もいない戦場に興味はないと思っていた。
でも、違った。秦の総大将が蒙ゴウと聞いて殿の顔が変わった。
魏の将軍として出陣すると……
「輪虎!いつも通りじゃ!先に行って目ぼしい将を狩って参れ!」
「はいはーい。」
それはいつものこと…ずっとそうして殿の側で剣を握ってきた。
でも、何でだろう…いつもの様に返事したけど上手く笑えない……
私兵達に出陣のことを伝え、忙しく準備に追われていると屋敷に帰れたのは夜になってから。
夜になり風は収まったがまだ激しい雨が降りしきる中、ようやく帰ることが出来た。
「ひどい雨…びしょ濡れだよ…」
そう独り言を呟くと葵が部屋に入ってきた。
「おかえりなさい…」
驚いたけどいつもの笑顔で微笑んだ。
「ただいま。こんなに遅くまで起きてたの?」