第2章 出会い②(輪虎side)
その時建物から少し年配の下女が出てきた。
「葵!まだ掃除終わらないのかい!?次の仕事があるんだから…」
言いかけたところで自分と目が合い、下女の顔色がみるみる青くなると恭しく跪いた。
「これは将軍。うちの下女が何か粗相を致しましたか?大変申し訳ありません。」
その声に葵は少し震えているようだ。
(ああ、葵の上司か。まぁ当然だけどこき使われてたんだろな。)
「葵の上官?下女を一人貰っていくけど問題ないよね?」
笑顔で、それでいて十分過ぎる殺気を滲ませて話す。
「いえ…しかし…」
下女は口ごもったけどそれを遮った。
「何か問題があったら僕の屋敷に使いを送って。その感じじゃ僕のこと知ってるみたいだし。」
ひっと下女が言ったけど気にしない。
こんなところで人を、しかも下女を斬る気はさらさらない。
そしてまた鼻歌混じりに歩き出した。
しばらくして葵が口を開いた。
「あ、あの…」
「ん?なぁに?」
「将軍…なんですか?」
ちょっと拍子抜けした。この子はそんな事にも気付いてなかったのかと。
「ああ、そういえば自己紹介してなかったね。そうだよ~。僕は将軍、輪虎。廉頗四天王の一人なんて言われてるかな?」
クスクス笑いながら伝えた。
相変わらず葵の顔は見えないけどきっと驚いてるんだろうな…と笑みを深めた。
でも予想と違った。怒気を含んだ声が聞こえてきたから。
「あの!降ろして!」
「えっ?」
「降ろしてって言ってるの!!」
今度は僕が状況を掴めないでいた。とりあえず言われるまま葵を降ろすと思いっきり睨まれた。