第23章 約束①(夢主side)
「やっと二人並んで走れたね。輪虎と同じ景色が見れたよ!」
いつの間にか笑顔だった。
ようやく見れた輪虎と同じ景色はとても綺麗だ…
「そうだね。いい景色だ…」
そのままあの丘にやってきた。
シロツメクサはなくなっていたけど代わりに夏の花がたくさん咲いている。
「やっぱり綺麗なところだね。」
景色を見渡してまた笑顔だった。
「ねぇ、葵。膝枕…してくれる?」
また突然のお願いに驚いたけどニッコリ笑った。
「うん…いいよ。」
膝枕をするといつもの優しい輪虎がいた。
見上げた空は夏の雲が見え綺麗な青空…
ふと気付くと輪虎は眠っていた。
(相変わらずどこかあどけなさの残る綺麗な寝顔…でも明日から隣にいないんだ……)
そう思うとどうしようもなく寂しくて悲しい…
そっと柔らかな髪を撫でながらまた歌っていた。
「相変わらず綺麗な歌声だね。」
しばらく歌っていると不意に輪虎が起きてビックリした。
「…っ!起きてたの?」
「さっきね…葵の歌声で目が覚めた。」
手が伸びてきて頬に手を添えられた。いつもの優しくて温かい手だった。
「ごめん…起こしちゃったね…」
「気にしないで。そろそろ起きないとダメだったしね。」
そう言って寝返りをうつと私の腰に手を回してきてぎゅっと抱き締められた。
「輪虎…?」
予想外の行動にまた驚いた。
「ん~…明日からしばらくこんなこと出来ないから…」
「そうだね……」
こんな風に甘える輪虎は初めてかもしれない…それでも全部が愛おしい…
また髪を優しく撫でていた。
少しそうした時間が過ぎてると輪虎は起き上がって思い切り伸びをした。
「よし。帰ろうか。」
そう言われて寂しくなった。
穏やかな楽しい時間はすぐに終わってしまう…もうアレを渡さないといけない時間だ…