第23章 約束①(夢主side)
「うん…殿はもう少し後なんだけど、僕は先に出てしなきゃいけないことがあるんだ…ごめん……」
いつもよりずっと寂し気な声…
気付けば抱き締められ私も抱き締め返していた。
「謝らないで…いつかこんな日が来ると思ってたから…」
不安と恐怖から小さく震えていた。
「震えてるね…」
「…少し寒くて……」
たぶん嘘だとバレてる…それでも本当の事は言えない。
ふふ…と笑い声が聞こえ思わず見上げた。
「葵が前に言ったよね?身分や肩書きは強い者が弱い者を守る為にあるって…」
「え……」
そっと頬に手を添えられた。温かい手を…
「今までは殿の為に、殿のお側で戦いたくて出てたけど今度は違う。君を守るために僕は戦に出るよ。」
優しいその笑顔に何も言えなくて胸にぎゅっと顔を埋めた。
涙が溢れて輪虎の服を濡らしていたけど、そんな私を何も言わずに抱き締めて優しく頭を撫でていてくれた。ずっと……
翌日からはバタバタと忙しそうに出陣の準備をしているようだった。
それでも少しでも時間を作って私と過ごすようにしたくれていた。
私も輪虎に渡したい物を大急ぎで作っていた。
そして出陣前日……
朝、また突然輪虎が部屋に来た。
「葵!出掛けよう。いい天気だよ!」
「えっ?でも明日出陣なのに?」
明日なのにそんなことしてていいのかと驚いた。
「明日出陣だからだよ。今日は私兵達にも休暇を取らせた。僕、今日は葵と過ごすと決めてたんだ。」
輪虎は笑顔だった。
私はまだ戸惑っていたけど馬で出掛けることにして二人並んで馬を走らせた。