第23章 約束①(夢主side)
それから暫くは穏やかな日々が続いた。
後からこういうのを『嵐の前の静けさ』の言うんだと知った……
その日、激しい嵐が魏国を襲った。横殴りの雨と雷…
そんな嵐がもたらした急報は秦国の魏国進攻。
嵐の中、輪虎も王宮に呼ばれた。
「こんな雨の中、やだな~…」何て言いながら出て行ったけどその顔が青いことに気付かないワケない…
いくら私でも分かる…秦国の進攻を阻止するための出陣。
分かってた…いつかこんな日が来ること…でも頭で理解出来ても心がついていかない…
怖い…こんな恐怖は初めてだった……
夜になり風は収まったがまだ激しい雨が降りしきる中輪虎が帰って来たのに気付くと、急いで部屋に向かった。
「ひどい雨…びしょ濡れだよ…」
そう独り言を言っているのが聞こえ、覚悟を決めると部屋に入り声をかけた。
「おかえりなさい…」
「…ただいま。こんなに遅くまで起きてたの?」
雨に濡れていたけどいつもの優しい笑顔…
それでもすぐ分かった。出陣すると…
輪虎の濡れた髪をそっと拭きながら静かに聞いた。
「………出陣…するんだね…」
一瞬、止まるのが分かった。
「…知ってたんだ。3日後、山陽に向けて出陣する。」
(やっぱり…どこかで否定してほしかったけどそれも叶わなかったな…)
「秦国が攻めてきたと嫌でも耳にするから…それに、輪虎のその様子を見たらすぐに分かるよ…3日後ってすぐだね…」
泣きそうになりながら何とか笑顔を向けた。