第20章 激情②(輪虎side)
男はその場にうずくまったが、手応えから致命傷でないことは分かった。
するともう一人の男が震えながら言った。
「今、こいつ輪虎って…」
「へぇ…僕のこと知ってくれてるんだ。」
血の付いた剣を持ち、ニヤリと一歩男に歩み寄ると男達は後退りしながら話している。
「誰だよ…輪虎って…」
「お前知らないのか!?趙国三大天の一人廉頗将軍の四天王の一人と言われてる将軍だよ!!俺、趙の生まれだから聞いたことあるんだよ!ヤベエ奴なんだよ…」
男達は三人固まって震えてる。
「僕も随分有名になったね~でも葵に手を出したことはあの世で後悔してね。」
言いながら剣を振りかぶるとまた葵が叫んだ。
「止めて!!」
ゆっくり振り返ると葵は恐怖に震えながらもあの力強い目で僕を真っ直ぐに見てきた。
それでも怒りが収まるはずもなかった。
「何言ってるの?君をこんな目に合わせて許せるワケないじゃない。」
首を傾げたが目も雰囲気もかなり危なかったはずだ。それでも葵は僕から目を逸らさなかった。
「私は無事だから!何もされてない…だから……」
その必死さにふぅ…と息を吐くと、怒りは収まらないが何とか剣を降ろした。
「分かった…葵がこう言ってるから逃がしてあげる。その代わり二度とここに現れるな!」
そう怒鳴ると男達は足を縺れさせながら逃げて行った。
そして、剣を仕舞うと今度は葵と向き合った。
「あの…輪虎…ありがとう……」